『SHIROBAKO』見たら働きたくなって結局平岡になった。このアニメ、おじさんが強い。

Anime
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総合評価:★★★★★

音楽:★★★★☆
物語:★★★★★
特徴:「働くとは」と考えさせられる


『SHIROBAKO』また見た。

何回目だよってくらい見た。ゴールド・E・レクイレムくらったのかよってくらい繰り返してる。

お前が「全話視聴」という真実にたどり着くことは絶対にない。終わりのないのが終わり。それがゴールド・E・レクイエム。

というわけで、もう劇場版すら公開した後ですが、「3話まで見るかー」と気軽に見始めたら完走しちゃったので語ります。気がつくとまた語り始めてる、それだけ


感想を一言で言うなら、「ジェットコースター」です。途中退場不可の。視聴者みんな強制的に振り回されて、最後に元いた場所に戻る。最高に楽しくて、最後は虚しい。そんなアニメ。

正直、最初は期待してなかった。花咲くいろはのクオリティが高くて、「あれを超えられるのか」という疑念があったから。

でも、その心配は杞憂でした。高跳びかよってくらい上がったハードルをきれいに飛び越え、内村航平を思わせるきれいな着地で大成功。ああ!う…美しすぎます!と、そんな感じです。


僕としては大絶賛のアニメです。「ブラック社会の闇を見せず、友情・努力・ちょっぴり現実をブレンドして視聴者を焚きつける。いい意味で性格が悪い」というのが率直な感想。


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徹底した「ブラック体質の排除」

まず全話みて思った。「アニメ業界ってブラックじゃなかったっけ?」と。日本一やりがい搾取をしてる業界でしょ、なのに見終わったあとに残るのは「なんかアニメ業界って辛いこともあるけど楽しそう」というね。

いろはのときも思ったけど、まじで見せ方がうまい。いろはの監督、水島さんじゃないけど。でも見せ方に関しては、ちゃんとシリーズで継承しててさすがPAだなと関心した。


ちゃんとブラックな部分見せてるんですよ。当たり前に深夜残業(残業という定義すらないかも)、超激務なのに低収入で四畳半住まい、コンテ終わるまで監禁などなど。

そういった闇を徹底排除して、あるいは不釣り合いなキャラのポジティブさで誤魔化すのが、いわゆる脳死アニメになる。『NEW GAME』とかね。けど、しっかり闇は映す。でも重くなりすぎないように、かつキャラの成長につながる説得材料としてちゃんと料理されていた。


それを感じられるシーンがたくさんある。


例えば、デスクで寝落ちしかけたとき「わたし、いま気絶してた」という台詞がある。それを見て視聴者は「あるある」って共感する。

例えば、疲れ切った目をして23:54に原画家の家に作画を取りにいく。これも前シーンとのギャップでギャグに昇華している。


他にもありますが、全部ギャグとしてうまく成立してます。平岡の過去くらいじゃないかな、まじで怖くなる闇は。

ここまでブラック体質を誤魔化すのって、「アニメ作りってすごい大変なんだよ、でもそれ以上に楽しくて尊い仕事なんだ」というメッセージを製作者側は持っているからですよね。だから視聴者は重くなりすぎずに見れる。ほんとすごい。

努力に見せかけた天才気質のヒロイン

で、もひとつ見せ方でうまいなって思ったのが「宮森のキャラ演出」です。主人公なのに嫌味も文句もまったくない。物語の中心であり、一歯車として徹底されている。良い意味ででしゃばらないのがいい。


ヒロイン5人のなかで、唯一ちゃんとした夢も目標もなく、ただただ激務に翻弄されて終わる。これで人気投票1位ですからね。矢野さん抜いて1位ですよ?堂本さん抜いて1位ですよ?見せ方をミスったら、「パットしないキャラ」か「1人だけ文句が多いキャラ」になりかねないのに。

そうならないのは、宮森が作品の真ん中で誰よりも苦労している場面を多く映しているからです。それだけじゃない。苦しんでるけどよく見たら新卒なのにレベル高くね?と気付ける天才気質。これがでかい。

「めっちゃ優秀やんけ!」と視聴者に思わせることで、多少の泣き言がむしろ可愛いポイントとなっていた。


まだあるよ。他4人はスキル不足で苦しむ中、1人だけ目指すものを持たないことで苦しんでる。これが「やりたいことがないです」と決り文句のように言う学生に響く。「それでもいい、頑張れば大丈夫だ」と視聴者に対してメッセージを送るキャラとして確立されてた



特に、僕が宮森が一歯車にすぎないなと感じたのは、終盤でした。

色んな人のいろんな力、才能が加わって、三女が出来たんですよね…過去からとか、別の会社から受け継がれたものもあって…それを含めたら、何十万人と言う人、何年、何十年という時間がつぎ込まれて…観てくれる人の感想や想いも全部注ぎ込まれて…アニメは出来上がっているんだなって…

SHIROBAKO 24話より


感じたというか宮森がまんま言葉にしてた。まあ僕が言いたいのはこれです。やりたいことがある人を援護することはできる、そう言った宮森は結局ヒロイン4人を助けたわけではありません。

それぞれ師匠となる人がいてその人達に助けられ成長した。宮森は『SHIROBAKO』の主人公だけど、作品のなかでは1人の製作者にすぎない。そのバランス感がね、「お前がいたら解決じゃん」という安っぽい展開を生まず、宮森が愛される理由なのかなと。

ボケを滑らせない雰囲気作りがうまい

あとはこれですね。しょうもないボケを『笑い(あるいは和み)』に変換してる。さすが水島監督。

アニメのギャグで「………(つまらん)」となったこと、めっちゃあると思うんですよ。でも『SHIROBAKO』に関しては「つまらない」とまで思ったのは少なかったなという印象がある。

これって、ボケに保険をかけてるからですよね。大事なプレゼンの導入で軽くボケるみたいな、「どういう反応するかな?まあ本題は別にあるんだけどね」という大失敗を避ける小ずるさを感じる。


久乃木が1人で打ち合わせに行った一連のシーン。ギャグとしてふつーにおもしろい、仮に滑ったとしても「いや、これ久乃木が一歩踏み出したシーンだから」と言い訳ができる。

庵野さんも、切羽詰まった宮森と対比してゆうゆうと登場する。しかし、ここにも言い訳は可能。「あの状況で庵野さんが出てきても不思議じゃないでしょ?」とね。

そういうシーンに細かいネタをぶちこんでくるんだから笑うわ。部屋がエヴァカラーだし、後ろにエヴァいるし。


こういったシーンを見て「つまんなっ」て思うのは間違いで、あっちは「ウケたらもうけ」くらいの感覚でふざけてるんだから、クスッとしておけばいんですよ。スイートなんてカメックスとクスクス笑ってると思う。言いたいだけ。

やっぱ保険って大事だなーと実感したね。リアルの保険ビジネスは客が損する仕組みでしかないんだけど。

創り手のエゴの出しどころがうまい

いろいろ言ってきましたが、総括すると「やっぱり水島監督はすごいな」っていうことでした。

中学1年で『とらドラ!』をきっかけにアニメにハマり、ヨスガノソラをアダルトアニメと勘違いするところからそれなりの数のアニメを見てきました。続きが気になって睡眠時間を削ることもあれば、つまらんと途中で切ったこともあります。

で、切ったアニメに共通してるのは「製作側の体力不足」か「作品よりエゴを出してしまう」ことです。

僕は作画厨ではないですが、最低限のクオリティは保ってくれないと見ていて疲れるのは事実です。高ければ高いだけ熱意も感じますしね。

それよりも、製作者側の熱意や想いが強すぎて、作品自体のクオリティが下がっているパターンは残念で仕方ないといつも感じます。「ここを見せたかったんだな」とか「こうしたかったんだろうな」って、視聴者にバレバレじゃダメだと思うんですよ。

単純におもしろさで惹きつけて、「あそこ良かったな!」とみんながいうポイントがどんぴしゃで狙ったところになる。製作側には「しめしめ思った通りの反応したな」とニヤついてくれるほうが視聴者は見ていて楽しいもんです

僕はガルパンも好きでオーディオコメンタリーとか何回も聞きましたが、水島監督の狙ったとおりに盛り上がって、惹きつけられてたって、分かったときは鳥肌が立ちましたよ。


『SHIROBAKO』も鳥肌が立つアニメです。仕事を頑張ろうと、明日から俺は変わるんだと、気合が入ること間違いないです。そしてあまり変われずに、また助けを求めるように戻ってくる。宮森の存在がどれほど重要か思い知って。

でも、それ込みで最高のアニメです。断言できる。だからみんな見てください。